詞乃端のオススメ本感想書き殴り+α

オススメ本の感想を書き殴りたい+宣伝したいの精神で作ってみたブログ。気が向けば他の事も書く予定。

辺境の老騎士(全五巻)/支援BIS

辺境の老騎士 1

あらすじ

辺境の〈大障壁ジャン・デッサ・ロー〉の切れ目に位置するパクラ領。

魔獣の侵入を阻む役目を務めるテルシア家に、長年仕えてきた一人の老騎士がいた。

 

老い衰え、己の死期が遠くないことを悟った彼は、主家に引退を願い出、財産を返上して旅に出る。

彼がこの世を去るまでの、珍しい風景と食べ物を味わう気ままな一人旅であったはずだった。

 

――しかし、それはやがて大陸中で語り継がれる、冒険譚ぼうけんたんの幕開けであった。

 

感想

なろうで好きだったWeb小説の書籍化作品。

三巻が発売されてから、四巻が出版されるまで大分間が開いたので、最終巻まで読めて嬉しいです。

でも、本棚スペース開けるために、なんで諦めて一~三巻手放しちゃったかな自分……。

(ガックシ)orz

お気に入りの本は何度も読み返す派なのに、Web版からの加筆が結構ある書籍版を、初めから読み返せなくなりました。

(涙目)

どの巻も見どころがありますが、完結作品を1巻ずつ丁寧に紹介していると、自分の筆の遅さのせいで新作の紹介に手が回らなくなるので、ざっくりな紹介です。

(汗)

 

まず、「辺境の老騎士」は、精霊や魔獣、異種族が暮らす、綿密めんみつられた世界観が魅力的。

神々の存在を強く信じるこの世界における『騎士』は、ただの領主や戦争屋ではなく、物語のような主君への忠誠や、民のための存在であることを理想としている。

そして、主人公バルドは、人民に忠誠を奉げると誓った、〈人民の騎士〉である。

そんな彼は、旅の初めから人助けをしていて、誰かを助けていくうちに、国を救い、果ては大陸を救うことにもなる。

バルドが旅の中で出会ったり、助けたりした人物(精霊・異種族も)は、後に意外なところでバルトを手助けしてくれることがあった。

偶然のようでいて、どこかに繋がる旅のえにしは、この物語の好きな部分だ。

 

そして、冒険譚と並ぶ「辺境の老騎士」の見どころは、ズバリ、グルメである。

架空の世界の架空の食べ物なのに、なんでどいつもこいつも美味おいしそうなんだ。

自分も食べたくなったじゃないかっ!!

特に、カムラーさんの料理は、バルドと一緒に毒づきたくなるぐらい美味しそうでした……。

バルドは、騎士の誓いで守るべき徳目を〈食徳〉に選ぶくらいの食いしん坊なせいか、本当に美味しそうに食べるし、グルメレポもすごく美味しそうなのですよ。

 

ただバルドは、単に食い意地が張っているという訳でもない。

 

もし味覚がなくなったら、自分が食べる代わりに、他の誰かが美味しそうに食べているところを見る、というバルドの意見は、彼が食べることを通して、生きることを大事にしていることを示している。

生きることを尊ぶバルドの姿勢は、そのまま彼の魅力であるのだろう。

騎士の理想のように綺麗なものしか目に入れないのではなく、汚さを含めて生きることを受け入れることが可能であるのは、バルドが尊敬できる様な老い方をしてきたからだと思われる。

 

「辺境の老騎士」の最終巻を読み終えて、改めて感じたのは、バルドの愛馬スタボロスとのきずなと、正式に結ばれることがかなわなかった、テルシア家のアイドラ姫への愛情であった。

バルドの彼らへの思いは、一貫して深い。

スタボロスは、旅の間もバルドのかたわらにり続けていたし、アイドラ姫の存在こそが、バルドを誓いだけではない〈人民の騎士〉にしたのだと、よく分かった。

 

ひょうきんなジュルチャガや、豪放磊落ごうほうらいらくなゴドン、後にバルドの養子となるカーズなど、「辺境の老騎士」に登場するのは、それぞれに魅力的なキャラクター達だ。

あまり友好的な遭遇そうぐうの仕方をしなかった人物さえも、信頼できる旅の仲間となったのは、バルドの度量どりょうにもよるのだろう。

 

古き善き騎士の冒険譚が読みたい方にも、グルメ系ファンタジーが読みたい方にも、「辺境の老騎士」はオススメですっ!!

 

あと、支援BIS先生の作品は、「狼は眠らない」も面白いです!