『白銀の墟 玄の月 ―十二国記―(三)・(四)』/小野不由美
あらすじ
こちらの世界と「蝕」と言う現象を通して繋がる、十二の国からなる世界。
その世界では、天から下された霊獣である
冬の極寒にさらされる
そして、
一方、主君を探し続ける女将軍は、彼女の王と同じ特徴を持つ男の命が、すでに絶えていたことを知らされる。
国は、民は、彼等の行く
感想
ようやく読めた、十二国記最新刊の続き!!
綿密な
何気なく描写され、後から意味を浮かび上がらせるものが
一、二巻でとにかく
また、「魔性の子」をはじめとする、これまでの物語の欠片があちこちに散りばめられ、一文だけでも
正直、自分はホラーが苦手で、「魔性の子」も、十二国記シリーズの他の作品と同じように楽しめた訳ではないが、「魔性の子」あっての本作だと、強く思った。
作中でも触れられているが、過去があっての今であり、今作を先に読まれた方には、戴国が
また、今作を読み、妖魔や不可思議が
泰王や女将軍をはじめとした登場人物たちは、立場や
泰王を
選ばれなかったから、転がり落ちたのか。
転がり落ちるから、選ばれなかったのか。
十二国記シリーズの世界観の根幹をなす「天意」は、まだ
そして、並び立つ好敵手との在り方の違いと、誰の味方とも判然としなかった、冬官の長の指摘が、解答であるのだろう。
十二国記シリーズでは、「道」という言葉がたびたび使用されるが、確かに新王は、道を見失っていたのだと思われた。
――道と共に、自分を慕う者たちの姿も、また。
過去の行いが今に収束していく様には、手に汗握ったが、それゆえに、明暗を分けた、在り方の差異が際立つ。
王に対し、民の様子も丹念に描かれているのが今作の特徴だが、民に対する女将軍の言動も印象に残った。
軍人である前に、泰王の臣であることを優先してしまいがちな彼女だが、だからこそ、民の保身を許容する彼女の姿が、心に迫る。
民、と一言で言っても、立場や境遇は多彩だ。
誰かを助けようと奮闘する者ばかりでもないし、
無力な彼らが、世界の無情を示すこともあった。
けれど、自分の選択で精一杯生きている彼らが、
とにかく、行間などに想像をかきたてられたので、2020年に刊行予定らしい、書き下ろし短編の発売はまだかと、ゴロゴロしている。