86―エイティシックス―/安里アサト
あらすじ
その戦場に、死者はいない。
(本文より)
隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受ける、サンマグノリア共和国。
共和国側は、同型兵器の開発により、犠牲を出すことなくその侵攻をしのいでいた。
――表向きには。
共和国八十五の行政区の外、第八十六区の人外領域に生息するのは、人型の豚。
人間でないものをのせれば、それは有人機ではなく無人機だ。
祖国であるはずの共和国により、劣等生物《エイティシックス》の
最前線の死地にて、若者たちを率いる少年・シン。
その
互いの顔も知らぬまま、それぞれの戦場で二人は戦う。
感想
ただいま最押しのシリーズっ!!
自分の好きなファンタジーじゃなくて、がっつりSFな末期戦のボーイ・ミーツ・ガールですが、いいんだよ面白いからっっっ!!!!!
(キリッ)
ただ、自分は激押しでも、『86―エイティシックス―』(以下86)は、ちょっと読む人を選ぶ作品かもしれないのは事実です。
だって、86って末期戦だもの。
俺TUEEE無し・ご都合主義無し・敵は無敵感
無能な味方に足を引っ張られる――
末 期 戦 。
俺TUEEEの
そんなもんはございません。
主人公は戦闘に関してチート気味ですが、無いもんは無いのです。
まず、主人公の装備、
86は、ライトノベルなのに、ライトはどこ? ってなる、重量級の設定+展開なのです。
あと、文学的な文章で、ライトノベルに多い
『
自分は、それゆえの
そこがいいっ!!! と思いますが。
さて、シリーズの始まりたる今作は、
少女が彼らと共に戦うまでのお話で、
少年が自らを呼び続ける過去を
86のヒロイン・レーナは、ラノベ主人公の相手役という
当初の彼女は、人間として扱われないエイティシックスの境遇に心を痛める聖女めいた振る舞いをしていますが、
それだけではない。
有能な指揮官の顔を持つ彼女は、良いところのお
そして。
迫害するものと迫害される側の断絶や、善意に潜む無自覚、迫害を受けるエイティシックスの哀れなだけではない部分も描いているのが、86の好きなところ。
また、生真面目で優等生的な性格であるレーナの、振り切れた末の思い切った行動は、作中の見どころの一つです。
と言うか、レーナさん、思い切りよすぎで最高でした。
今作は、どちらかというとレーナ視点から物語が展開され、
箱庭のお姫様が
一方、86の主人公であるシンは、作中屈指の実力を有し、『死神』の異名を与えられた少年兵。
それから、彼の異名の由来の一つは、物語の根幹に関わってもいる。
作者様は、あとがきでガーターベルトの
(真顔)
いいよね、異能。
無人兵器とかホログラムとかのSF要素のなかに、ファンタジー要素が混じっていて。
(勝手な見解)
まあ、シンの異能は、のんきに浪漫とか言っていられる、生やさしい代物でもないのですけれども。
その辺りは、ホラーテイスト入っております。
そして、異名関連では、
読み返すたびに泣く。
骸骨の騎士に
だからこそ、白銀色の少女や、過去に置き去りにされ、泣き続けてきたこどもの描写も、余計に胸に迫ったのです。
また、シンの異能のお陰でもあるのですが、
戦い以外のエイティシックスの日常が自由過ぎ。
共和国内の描写と対比すると、閉じ込められているのはどっちや、と思う程。
戦いの合間の日常や、自覚もできない、身分違いのほのかな恋情は、86のラノベっぽい部分だと思います。
けれども、エイティシックスたちが
……同じ空の下で交わされた約束は、現実の無情の前では
もうね、ガチの末期戦だったので、最後の一文と見開きイラストが感動ものなのです。
これ以上書き殴るとネタバレしそうなので、読んで確認していただきたいですよ!!!
86、表紙からして、ラノベにありがちな女の子のイラストがど~ん! とかではなく、世界観を表すような構図で格好いいのよ。
ちなみに自分は、6、7巻の表紙のイラストを見て、ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ?!! と、なりました。
だって。
だって!!!!!
(ネタバレになるから言えない……)
それぞれの中身の感想は、そのうち書きますが、
毎巻の見開きイラストも、その巻ごとの象徴的なシーンになっているのが好きですよ。
あと、86は、小説投稿サイト『カクヨム』の電撃文庫公式ページにて、番外編が読めるのですっ!!
ちびシンの目がだんだん死んでいく末期戦や、学園IFや、本編掌編とか、豪華ですよねっ!!!
番外編も学園IFも、本になったら絶対買うからぜひとも本になって頂きたいです。
(必死)
コミカライズ版もあるので、86読む人増えるとうれしいっ!!
追記2020/11/13 八巻まで発売中!!